世界に冠する科学人材立国を守ろう
面白い理科教材こそが理科離れを食い止める

NPO法人・理科教育推進会・代表理事
柴田 聖剛

   私たちが活動の拠点としている浜松地区は伝統的にブラジル国籍の方々がたくさん居住されています。ブラジルは資源も豊富であり、国土も広く、人口も日本の1.5倍以上ある国です。ブラジルに住んでいる方は、日本が次から次へと新しい科学的な進展を遂げることが不思議でならないそうです。あんなに小さな国のどこに、それほどのパワーが詰まっているのだろうか、と。

 資源が乏しく、他の国々と海か空を隔てた交流しかできない島国の日本が、このように世界を代表する先進国に至ることができた理由はなんでしょうか。それは一重に人材によるものだという意見に反対する良識者はいないと思います。特に科学分野において日本が輩出した優秀な研究者・開発者は数知れません。それゆえ、日本を世界に冠する科学人材立国と言っても過言ではないでしょう。科学人材立国であるからこそ、日本はそのアイデンティティを保つことができるのです。

 しかし、近年、科学人材立国・日本に異変が起きています。科学の道を志そうという人々が少なくなり、理系よりも文系に進もうという若者達が増加する傾向があります。いわゆる理科離れです。このままでは、科学立国日本は崩壊の時を確実に迎えるとも言われています。その事態が生じた理由は、世間で多く論じられていることですので、ここで述べるまでもないのですが、私は「どうして子ども達が理科を好まなくなったのか?」について、実際の現場で確かめてみることにしました。

 そして、予想外の結論にいたりました。少なくとも子ども達は「理科離れしていない」のです。今も昔と変わらず「子ども達は理科が大好き」なのです。生きた教材、面白い教材を目の前にすると、子ども達の目は宝石のように輝きます。質問がポンポンと飛び出し、もっと触ってみたい、もっと試してみたい、と積極的に学習しようとするのです。これは、正に科学者が何かにとりつかれたように研究に没頭する心情ではないでしょうか。「子ども達は理科が大好き」なのだ、という確信を得た時、私は子ども達に生きた面白い理科教材と楽しい理科の時間を提供することをライフワークにしようと決意しました。理科離れの原因は子ども達にはないのです。全く悪意はないにせよ、彼らをとりまく環境をつくった大人の側に原因があるのです。私たちは今、子ども達が明るく豊かな未来の日本で生きていけるよう、子ども達に本当の生きた理科教育の機会を提供する必要があるのではないでしょうか。

 実は、全国には私と意見を同じくする方が大勢いらっしゃいます。特に科学の最先端をいく企業がひしめく浜松地区には、強く賛同して下さる方が大勢いらっしゃいます。私たち、理科教育推進会は、この浜松の地を中心として、日本の理科教育に新風を吹き込み、日本の明るい将来を支える人材育成のための礎になるべく、これからも活動していきます。応援して下さいね。


シンボルマークについて
 このシンボルマークは私たちの理念に賛同して下さった静岡大学のK先生(ご本人の希望により匿名にて)が無償でデザインして下さいました。

 理科教育推進会の英語短縮名であるPASEの頭文字であるPの字を型どったものですが、それだけではありません。私たちの団体はカエルを育てることから活動を開始したのですが、よく見ると目の大きなオタマジャクシに見えませんか?さらに、浜松地区のシンボルでもある浜名湖を横からみた形にも見えると思うのですが、いかがでしょうか。



 また、このNPO団体の土台となったのが、1950年以降に理事でもある坂口章が行ってきた、科学研究に必要な実験動物や試料の提供などの地道な活動でした。PASEの文字の真ん中のASは坂口章のイニシャルにもなっているのです。様々な思いが、このシンボルマークと団体名に込められているのです。